未知に向け 2
「ボケは交通事故で脳に損傷が生じた場合はもちろん老人になると骨折しただけでも脳細胞の減少を起こすという。
逆に年をとると転びやすくなるが、これは足が弱ったせいではなく脳の老化のためにバランスがとれなくなったからで、老化と骨折が加速し合ってボケを促進していくらしいね」
先輩は社長時代から、経営者に求められる3つの資質は"品性、教養、体力"であると強調していました。
その体力維持がボケの防止にもつながっているとしたら、まさにたいせつな経営者の要件でしょう。
「どうだい?最近ボクの人相はよくなっただろう」
先輩は自宅に戻って、洗面のあと和服に着替えると、屈託ない調子で私の待っている応接室に入ってきました。
「サラリーマンは皆社長になりたがるが、実際なってみると、あまり楽しいものじゃないね。
ボクは社長を辞めてから顔つきがよくなったと皆から言われるよ」
「なかには社長を辞めて秘書がいなくなり、ガードマンがつかなくなって淋しいと嘆いている人もいるようですが・・・」
「その人はいいときに社長を辞めたよ。
それ以上やっていると老害だからね。
だいいち人間、秘書が欲しくなったら老化のはじまりと覚悟せにゃならん」
・・・この先輩は現在老夫人と二人暮らしだが、なにからなにまで自分でやるといいます。